CHOCOLAT DOUX
開発ストーリー
Authored by 前田 奈那
ショコラ・ダ・ファミリア代表
「家族のチョコレート」が
コンセプトの
チョコレートブランドなのに。。
チョコレートはみんなが大好きな代表的なスイーツ。
とけるし、誰でも簡単に食べられるものと思われていますが、噛む力や飲み込む力が弱い(嚥下障害と言います)代表の息子にはチョコレートを食べるのは難しいなあ。。とチョコレートをあげられずに過ごしてきました。
「家族のチョコレート」をブランドコンセプトに掲げたチョコレート屋をやっているけれど、肝心の自分の家族にチョコレートが食べられない人がいる。
この事実にぶち当たって、何年も時間が過ぎ。。。
そしてある日、「でもやっぱりなんとかしたい。」
そんなシンプルな思いから始まりました。
「チョコレートはとける前は硬くて、
噛む力が弱い人は食べるのが怖い。
とけたあともなんとなく
喉に張りついて、
飲む力が弱い人も食べるのが怖い。」
でも、なぜ嚥下障害を持っている人はチョコレートを敬遠するのでしょう?
そもそも私たちはチョコレートをどうやって食べているのか。
今まで考えた事がなかった事を考えました。
口にいれてるとまず、もぐもぐ口が動く。カラフルショコラのような純チョコレートはもちろん、ちょっと柔らかめの生チョコでも、口の中で噛んでいくうちに、まろやかにとけていく。。。
あれ?
なんと「チョコレートはとけるから食べやすいよね。」という「とける」は実は、ちょっと噛んだあとの事だったのです。
噛む力が弱い方は、最初に噛まないといけないという行為でつまづいてしまうのです。
次に、口の中でとけたチョコレートは喉に移動します。
嚥下障害の有無に関わらず感じる人も多いと思いますが、
なんとなく、喉に張り付いた感じがあったり、食べたあとに水分をとりたくなることがある方も多いと思います。
なぜなのでしょう?
専門家にお話を聞いてみると、(日本チョコレート組合の方、監修の志水さん、ありがとうございました。)チョコレートは粘性(粘り気)が高い物質なため、完全にとけきる前に噛んだり、送り込んで飲み込むと粘度の関係で喉に張り付いた感じになるとのこと。
なるほど、私たちはチョコレートが完全にとけきる前に、喉に送り込んで、飲み込んでいるのです。
飲み込む力が弱い人は、とけきる前に飲み込むことは難しいですし、また喉に張り付いた粘りを拭うことも難しい。
つまり、チョコレートを食べるには噛む力と飲み込む力がちゃんと必要だったのです。「とける」というチョコが物質的に変化することと、食べやすいかと言うことは違うものだったということです。
私たちは、これらの問題点を解消すればきっと嚥下障害の方でも楽しめるチョコレートを作ることができるとすぐに思いました。
なぜなら、チョコレートが一番美味しく感じられるのは、口の中でとけて、まろやかな味わいを感じる時、つまりその瞬間には噛む力も飲む力も入らない瞬間だからです。
切っても切り離せない
超高齢化社会と嚥下問題
個人差はありますが、加齢にともなって、噛む力や飲み込む力は衰えていきます。超高齢化社会を迎えるにあたって、嚥下に問題を抱える方は年々増えていくと言われています。嚥下障害の方でも食べやすい嚥下食、介護食、高齢者食といったジャンルの市場規模は2026年には2091億円にまで拡大すると予測されています。(矢野経済レポートより)
今まで美味しいものを食べてきたのに、加齢や病気のせいで食の選択肢が減ることはとても残念なことです。代表の息子のように先天性の病気で嚥下障害を持つ方のみならず、超高齢化社会において嚥下問題は誰にでも起こりうること。さらに、これから高齢を迎える世代の方たちは、若い時から美味しいチョコレートを食べてきた方たちです。
そんな時代背景が見えていることも、やはり無視できません。
歳を重ねても、どんなときでも美味しいチョコレートを食べてもらいたいという思いはますます高まりました。
インクルーシブパティシエ
志水香代氏と
昔ながらのチョコレート工場
といっても何から始めていいのやら。
約75年の歴史をもつ関連のチョコレート工場(フランス屋製菓)のショコラティエに、今回開発するチョコレートのコンセプトを説明するも、目指す食感がわからず困っていました。
そこで、かねてよりインクルーシブパティシエとして活動されている志水香代氏を見つけ、思い切って監修を直談判。私たちの思いを直球で送ったところ、温かく受け入れていただき、株式会社宮源の取締役 高橋さんと共に絶大なご協力の中開発が始まりました。
「そもそもチョコレートはとけるもの。既存の食感が滑らかで口どけがいいものだと思い続けていました。」
「チョコレートが食べられない人がいるという発想は全くありませんでした。」(フランス屋製菓製造部コメント)
開発当初はショコラティエたちもどんなものになるのか想像がつきませんでしたが、誰もがこだわったことは、食感は新しいかもしれないけれど、美味しいこと。見た目は普通のチョコレートの形(固形)にすることでした。
何度も試行錯誤を繰り返していく中、特に製造時の温度管理には苦労がありました。チョコレートが柔らか過ぎて、通常の温度下での製造工程では最後のカットでとけてしまう。
「もうこれは、冷凍状態で仕上げるしかない。」
とショコラティエが覚悟をきめて冷凍庫に入って作業をし始めました。
その結果、見た目も、味わいも、そして新しい食感も、すべてのバランスを保ちかつ、量産ができるレベルまで仕上げることができました。
パッケージに込めた思い
市場にでまわっている嚥下食や介護食において、限りなくギフト商品が少ないということにも注目し、素敵なデザインのギフトパッケージにするということにもこだわりました。受け取る人はもちろん、商品を選んで贈る人の気持ちも大切です。
家族みんなで食べられる喜びを表現する明るさと、チョコレートがゆっくりととけるイメージを併せ持った高級感あるデザインが出来上がりました。
CHOCOLAT DOUXは嚥下障害の方専用のチョコレートではなく、誰もが美味しく食べていただけるチョコレートです。あえてパッケージには介護や嚥下障害を連想させる要素は加えないことにもこだわっています。
家族みんなで同じものを
食べる喜びを
家族の中に食事に配慮が必要な方がいる場合、特別なメニューを準備するのが当たり前になりがちです。また特別なメニューを準備することも決して楽ではありません。
そんな中でも、お祝いの日には、蓋を開けて少し待つだけで、家族全員が同じチョコレートを楽しめる。その喜びをご家族みなさんで体験いただけたら幸いです。
家族の笑顔と会話が溢れるチョコレート、まさにショコラ・ダ・ファミリアのチョコレートが完成です。